魅力という言葉は石のためにあるのかもしれない。
硯は眺めているだけでもいい。そんな魅力的な硯に使われる石の種類。これがまた無数に存在する。そして、硯の形も無数に存在する。集めても集めきれるようなものではない。
だが、巨大なものはともかく、手のひらに載るような硯であれば、場所もさほど取らないし、財布にも比較的優しいので、いいなぁ、と思うと買ってしまう。明らかに、石に魅入られているのだ。
宝石、という言葉は、宝の石なのか、石が宝なのか、よくわからない。人は昔から宝石に魅せられている。
また、神社のご神体も石だったりする。パワーストーンなるものも売られている。おそらく、石にはなにか神秘的な力が宿るのだろう。実際になにか宿るのか、それとも錯覚なのかどうかわからないが、人間が石を大切に思ってきたのは間違いない。
硯に造形美があるかと言われれば、一応あると思うのであるが、それよりも、石という所に魅力があるのだ。
石の魅力とはなんだろうか? あの重さか、手触りか、冷たさか、堅さだろうか?
硯を買って、一回も使わないという人は結構いるようだ。だが、その気持ちはよくわかる。喩え墨を磨らなくとも、触って眺めるだけで、硯は充分に人の癒やしに役立っていると思う。
ストーンセラピーである。