ネタバレなし。
隆慶一郎作品は吉原御免状シリーズで最高に楽しませてもらった記憶がある。
漫画の花の慶次を読んでいたので、そのイメージが拭えなかったが、小説とは物語が少し違うようだ。
この小説の見所はなんと言っても前田慶次のキャラクターである。豪放磊落、型破り、歌舞伎者、そんな形容詞では物足りない。完全に狂っているのだ。キチガイ、と呼ぶのがわたしの中でしっくりとくる。
セックスの最中忍びがやってくる。巨大な陽根を屹立させたまま夜具の上に胡座をかく。
変態である。
小説とは言え、こんなキチガイをリアルに描くというのは並大抵の技ではない。
あえて苦言を呈すると、この小説、ちょっと長い。朝鮮のくだりなどは飽きてしまった。面白いのではあるが。
解説を秋山駿氏が書いている。この解説が実に見事というか、この小説の価値を簡潔に述べている。
小説を読んで、漠然とした面白さを感じる。解説を読んで、なぜこの小説が面白かったのか理解する。
まさに、解説かくあるべし、という解説だった。
昨今の解説は、表面すら読めていない解説。本当に読んでるの? と思いたくなるような解説。解説の意味を辞書でひいて見ろと言いたくなる解説。ネームバリューだけで書かせたような解説がおおい。解説の重要性を改めて感じた作品でもある。
本屋で一夢庵風流記を買うなら、秋山氏の解説が載っているか確認して買った方が良い。