宮本輝の芥川賞受賞作品。非常にレベルの高い芥川賞作品である。
宮本輝の小説は一言で言うと「めちゃくちゃ上手い」
読みやすいし、場面がすらすらと頭に入ってくるし、人間は目の前にいるように浮かび上がる。それでいて、難解な言い回しを使っているわけではない。的確な場面を選び、必要最小限の言葉を使っている。
本作品は中学生の淡い恋である。しかし、その中学生がなかなか悲惨で父親は死ぬは、母親は父親と駆け落ちのような感じで出てきた人間だし、その母親の兄というのがまたちょっとずる賢かったり、家庭環境は複雑である。
ネタバレあり。
ただ、女の子との恋愛はすっきりいく。なぜなら、恋敵が死ぬからである。自殺か事故死かはわからない。
最後の蛍の場面は美しい。文字だけであの荘厳さを表現できるというのはまさに宮本の筆力に他ならない。日本文学史に残る名作だと思う。