川端康成文学賞を取った作品らしい。
30ページほどの短編である。様々な人物の視点から、ある空港での出来事を描写した実験的な作品。短い作品なのであるが、濃密に描かれている。人物の接触をえがくことにより、その人物達に深く入ることが出来る。
これは相当な職人技、とでも呼べるようなもので、おいそれとは真似できない。これほど上手く小説を書けるのに、その他の短編がいまいちなのはどうしてなのだろうか。犬とハモニカがいいだけに、他の作品が手抜きに思えてしまう。
アレンテージョなどはなぜ同性愛なのかがわからない。普通のノーマルのカップルで良かったのではなかろうか。当時は同性愛というだけでセンセーショナルだったのかもしれない。文学作品はやたら同性愛が多い。
しかし、昨今、同性愛も人口に膾炙するようになり、特段珍しいものではなくなってしまったので、わざわざ文学でそれを読むと疲れる。
このあたりは同時代の作品に求めることであり、8年前に書かれた本書に対して言うのはお門違いなのかも知れないが。