テーマは父親とレミーマルタン。これをどう料理するか。小説家の腕の見せ所であろう。
読み終わって感じたのは、下手ではないが、そんなに上手くできているとも思えない。
無理くり感が半端ないのはそういうオーダーだからしょうがないとして(しかし、そこを自然に書いてこそプロだとも思うのであるが)、まず、レミーマルタンがそれほど美味しそうではないのだ。
せっかくのレミーマルタンがその他大勢の酒とあまり変わらない印象なのだ。おそらく、作者が酒を飲まないか、もしくは、それほど美味しいと思わなかったかのどちらかだろう。
わたしは前者だと思う。酒飲みなら、酒を無駄に熱く語るのだ。
そして、父の扱いである。父の日だからちょっと高い酒=レミーマルタン、というのはいかにも安直に過ぎるであろう。
酒飲みが一番困るプレゼントが、全く酒を解さぬ者が適当に選んだ「酒」をもらうことである。酒にはストーリーがあるのに、そのストーリーをガン無視して酒だけホイと渡されても、困ってしまうのだ(たまに凄い当たりもあるが)。
はっきり言ってレミーマルタンは超高い。しかも、ブランデーはウイスキーよりも取っ付きにくい。買ったはいいがブランデーは苦手でした、となりかねない。果たして、贈答品としてレミーマルタンが飛び交うことがあるか否か。