昔話にケチを付けるほどバカらしい話はない。兎と亀だって、兎や亀が口を利くわけはない、と言ってしまえばそれまでの話だ。
ただ、金の斧と鉄の斧が気になったのは、最近万年筆に再び凝っていて、やっぱり金ペンはいいよなぁと思えばこそである。
キコリがある日、湖畔で木を切っていたら、勢いよく手からすっぽ抜けた斧が池まで飛んでしまった。
どんだけ勢いよく飛んだんだ?
湖の女神が出てきて、
「おまえが落としたのはこの金の斧か」
と問う。
女神も斧が降ってきてたいそう驚いたことだろう。素直に降ってきた斧を返してやればいいものを、わざわざ金の斧を持ちだして、これか、と聞くのはたちが悪い。
キコリは「ちがいます」と答える。
女神は今度は銀の斧を持ちだして聞く。
キコリは「ちがいます」と答えつつも内心、「つまんねぇギャグかましてないで早く返せコラ」とキレ気味だった。
金の斧にどれだけの魅力があるかわからないが、金のペンには不思議な魅力がある。
わたしはなんだかんだで万年筆を20本くらい所有していて、うち半分ほどが金ペンである。
金ペンは書き味がいい、というが、鉄ペンでも滅茶苦茶書き味がいいペンはいくらでもある。書き味だけを求めるなら、わざわざ金ペンを買う必要などない。ならば、金ペンの魅力とは何なのか。やはり、金であるというところが大きい。金のペンを使っている、というだけで、エフィカシーを高めることが出来る。
金ペンの価値はエフィカシーをあげるためだと思う。
逆に鉄ペンはエフィカシーが下がる。
なんて思うのはわたしだけだろうか。
その意味で金の斧と金ペンはやはりちがう。
金の斧や銀の斧がエフィカシーを高めることはないだろうから。