定年を迎えた男の哀愁を描いた作品。翌日、男は長年住んだ家を取り壊し、息子と二世帯住宅を新たに作る。それまでの思い出などが詰まっている家を壊すというのは、他人にはわからないが、当人にとっては一大イベントである。家には記憶が付随する。
その家で起こったことをいろいろと想起する。自分の嫉妬心やら、仕事とはいったい何であったのだろうか、自分の社会に対する役目だとか、そのようなことを考えながら半日銀座をうろつくという、ある意味異色な作品である。
文章は簡潔で静謐。無駄がない。文学を書く上で手本となる作品である。
日本文学100年の名作第8巻1984-1993 薄情くじら (新潮文庫)
- 作者: 池内紀,松田哲夫,川本三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/03/28
- メディア: 文庫
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