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海へ を読んだ

 

誰もいない夜に咲く (角川文庫)

誰もいない夜に咲く (角川文庫)

 

 ↑に収められている。

タイトルがあまりに非魅力的だったので、読むのが一番最後になってしまった。全く期待しないで読み始めたが、止まらなくなった。圧倒的筆致と心理描写、情景も退廃的で正に文学という作品である。

駄目女が駄目男に惚れて落ちていく話なのであるが、悪人は出てこない。むしろ、全員善人である。それなのに、不幸の香りがする。しかし、不幸ではない。では、幸福かと言えばそんなことはなく、幸福を求めるも、求めきれない。

善人故の遠慮深さ、冷徹になりきれない思いやり、たかりきれない良識、などを底辺の人間が遺憾なく発揮する。

しかし、タイトルで損をしているような。もう少しマシなタイトルは付けられなかったのだろうか。

 

これで第十巻はすべて読み切った。