↑に収められている。
タイトルがあまりに非魅力的だったので、読むのが一番最後になってしまった。全く期待しないで読み始めたが、止まらなくなった。圧倒的筆致と心理描写、情景も退廃的で正に文学という作品である。
駄目女が駄目男に惚れて落ちていく話なのであるが、悪人は出てこない。むしろ、全員善人である。それなのに、不幸の香りがする。しかし、不幸ではない。では、幸福かと言えばそんなことはなく、幸福を求めるも、求めきれない。
善人故の遠慮深さ、冷徹になりきれない思いやり、たかりきれない良識、などを底辺の人間が遺憾なく発揮する。
しかし、タイトルで損をしているような。もう少しマシなタイトルは付けられなかったのだろうか。
これで第十巻はすべて読み切った。

日本文学100年の名作第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所 (新潮文庫)
- 作者: 池内紀,松田哲夫,川本三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/05/28
- メディア: 文庫
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