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トモスイ を読んだ  〆 を読んだ

最近日本文学100年の名作ばかり紹介している。

短編で小説自体短いし、感想も短いので二編まとめて。

 

 

トモスイ を読んだ

 

トモスイ (新潮文庫)

トモスイ (新潮文庫)

 

 

 

得体の知れない釣りに出た二人の話。人間のつながりを描いている。真っ暗な海に二人で船を出す。それだけで、人間の親密度は増す。その中で釣り上げる不思議な生物。その生物には穴と突起があり、そこから中の体液のようなものを据える。二人で両方から吸って、どんどん小さくなる生物。しかし、二人はそれに比例して一つになる。

こういう作品はまじめに考えるのではなく、抽象画のように楽しんだ方がいい。タイトルもふざけている。たぶん、共に吸うから、トモスイ。

 

 

〆 を読んだ

エムブリヲ奇譚 (角川文庫)

エムブリヲ奇譚 (角川文庫)

 

 ↑に収められている連続短編。山白朝子は乙一さんの別名義。

江戸時代だろうか、それとも明治初期だろうか、二人の旅人が不思議な漁村に迷い込む。その漁村は丘を登り切った上にある。つまり、海が高い位置にある。そのような演出で幻想を作り上げている。

その漁村ではあらゆるものが人間の顔に見える。木も魚も米粒も。主人公はそれらが恐ろしくてなにも喉を通らず、衰弱していく。しかし、一緒に旅をしていた蠟庵は平気で食べる。

主人公はついに腹が減りすぎて、飼っていた鶏を潰して食べてしまった。そして、病気が回復して町に戻り、そのことを悔やむ。袋の中から鶏の羽根が出てくる。はたして、あの漁村は幻想であったのが現実であったのか。虚と実の境目をさまよう小説。