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くまちゃん を読んだ

角田光代氏の作品。

主人公の女が大学時代のサークルの面々とお花見をしていると、そこにだれの友達でもない男が混ざっていた。みんなが適当に知り合いを連れてくるので、みんながみんな誰かの知り合いだろう、と考えていたが、実はだれの知り合いでもない。

そんな男を女は家に上げてしまう。男は別に隠すこともなく、ただ酒とただ飯にありつくために花見に潜り込んだという。

そんな男を二ヶ月間、アパートに泊める女。

女は日々繰り返される毎日の中に自分が埋没してしまうことを恐れる。男の破天荒さは、そんな女にとって魅力的であった。

男は二ヶ月くらい経つと、徐々にフェードアウトして、ついには女のアパートに現れなくなる。別れの挨拶もなく。

おんなはある日新宿の雑踏で、男を見つけて、そのことを問い詰める。だが、そんな男の滅茶苦茶なところが魅力的だったのだろう。

 

以下ネタバレ、というかわたしの解釈。

 

男はアーティストに憧れていた。そして、アーティストたるもの、普通の暮らしをしていてはならず、常にアーティスティックに生きなければならない。例えば、知らない花見に潜り込む。そこで女をものにする。風のように消える。

別れるにしても、具体的な理由があってはアートではないし、付き合うにしても、理由や目的があってはアートではない。

アートという理屈を越えた世界を以下に体現するか、男は極めて周到に注意深く行動している。そのアートの軌跡辿りながら、アートとはどういうことか、女の感情を通して語った作品なのではなかろうか。

 

 

くまちゃん (新潮文庫)

くまちゃん (新潮文庫)

 

 

 ↓この巻に収録されている。