多和田葉子は存命作家で最も気に入っている作家のうちの一人である。いろいろな作品を読んだが、芥川賞を取ったこの作品はとてつもない作品で、文学的に優れている上に面白いという、希有な作品である。
犬と結婚するお姫様の前振りで臭わせて、太郎という犬とも人ともとれぬ人間を出し、その太郎が塾の生徒の親と夜の遊び友達。
団地の噂話で作品の空気を醸成し、塾の子供たちという無邪気且つ容赦ない存在で話を進めていく。
純文学なのに、ハラハラどきどき手に汗握る。こんな荒唐無稽な話なのに。風変わりな主人公がまともに見えてしまうくらいの周りの人間の狂い方。
読んでよかった作品。