今、メールで出会い系などは廃れていると思うし、欲望むき出しの退廃的なイメージが強いので、綺麗なラブストーリーは作れないだろう。映画の設定は2000年代初頭。この時代ならではの雰囲気が絶妙に醸し出されている。まだネットが生活品ではなく、未来を感じさせてくれていたあの時代だ。ダイヤルアップが懐かしい。
また、町の本屋VS大型書店というのも時代だろう。今やリアル書店VSネット書店であり、その先に、紙book VS E-bookの時代にさしかかっている。
ネタバレあらすじは以下の通り。
町の本屋を経営しているメグ・ライアン と、丸善のような大型書店の経営者のトム・ハンクスが出会い系サイトで出会ってメールで文通する。お互いそれぞれの立場は知らない。リアルでは大型書店が町の本屋を圧迫している。リアル世界ではトムとメグはお互い対立しているが、ネットではお互いの素性を知らないのでリアルでの悩みを打ち明け、慰め合ったりアドバイスをしたりする感じ。ここまでは普通のラブストーリーである。
しかし、実はこの映画、ラブストーリーにかこつけたリバタリアニズム、マッチョリズムを体現した映画に他ならない。
その後、大型書店のディスカウントを批判していた社会主義者とメグはいざこざを起こして別れる。町の本屋は潰れる。トムの方だけメグの素性を知る。そして、たらし込むのはいいが、メグの方もホイホイとたらし込まれてしまう。つまり、資本主義を受け入れてしまうのだ。ほんの一昔前の話だが、なんとも純朴さと長閑さを感じてしまう。