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オーバーヒート 千葉雅也 165回 芥川賞、ノミネート作品 を読んだ

 

 

 

前作、デッドラインの続きである。前作は修士課程を語っていたが、今作は大学に勤務したあとのはなし。

 

主人公の名前が○○なのである。なぜだろうか? 名前くらい付けてやればよかったのに。

 

ぶっちゃけ本人なのだから、千葉さんでよかったのではなかろうか。栃木出身で京都の大学に勤めてるのだから、本人そのまんまである。自伝でよかったとおもう。

 

前作の講評に、「小ネタの回収が出来ていない」と書いたが、本作では小ネタの回収をする気もないらしい。

 

ネタではないのだ。本作は私小説で、自分に起こったことをそのまま羅列している。創作部分もあるのかも知れないが、創作かどうかはわからず、読者は主人公の暮らしを淡々となぞるだけ。

 

小野寺という敵らしき存在が現れて、「お、ここから物語の展開か?」と期待させたと思いきや、出版パーティーで挨拶するだけでおしまい。

 

やおい小説である。山なし、オチなし、意味なし。ならBLかと言うと、主人公は40歳のおじさんなので、ボーイではない。

 

前作同様、主人公はゲイである。今作はベッドシーンが多用されている。正直、芥川賞候補作品でなかったら、1ページ目で本を閉じている。購入を考えているひとは、ネットで買うのは注意した方がいい。ちゃんと立ち読みして、耐えられそうなら買うべきである。読者を選ぶ作品だと思う。私は選ばれざる読者だった。

 

突っ込みたいところは(もちろん小説にだ!)多々あるが豚のロースを頼んどいて脂身を食わないというのはいただけない。

 

よく豚の脂身を高カロリーだと残す人がいるが、あそこが一番美味いのだ。豚の脂身は一種のソースである。そのソースに赤身をからめて喰うと考えて欲しい。もし、カロリーが気になるなら、次の一食を抜けばいいだけである。豚の脂身はそこまでして食う価値のあるものである。

 

貶しまくってあれなので、1つ褒めると、文章はかなりよくなっている。前作が酷かったのでなおさら良さが目立つ。

 

この著者はフィクションは書かないのだろうか? それとも、自伝的小説だけが芥川賞にノミネートされ続けているのだろうか?

 

今回の受賞予想。この作品はない。

 

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メッセージ を観た

 

 

宇宙人が地球にやってくる。しかし、言葉が通じないので、言語学者が活躍するというもの。

 

謎の巨大物体と言うことで、どことなくカドに似ている。が、中身はこちらの方がまとも。それほど破天荒なこともない。

 

この作品は謎の物体そのものがテーマではない。

 

ネタバレ!!!!!!

 

宇宙からきたこの物体は時間の概念を変えるヒントを人類にもたらす。時間は直線的に流れるものではなく、平面のように見渡せるもの、という。

 

主人公の言語学者はその能力=未来を見る能力を持っている。そして、ここからがこの作品のテーマである。

 

はたして、未来を知っていたとしても、その未来を選ぶのか。その未来が不幸なものであったとしても。というとても切ない物語。母子愛の話なのだ。

 

SFものの中では好きな部類だ。

 

 

 

165回 芥川賞、ノミネート作品 くどうれいん『氷柱の声』を読んだ

 

 

 

3.11ものである。ちょうど十年なのでタイミング的にはいいかも知れない。震災を忘れない、というテーマはよく届いた。

 

3.11ものというと、どうしても美しい顔を思い出してしまう。ぶっちゃけ美しい顔に似ている。

 

震災を忘れない、というテーマの他のに、もう一つ、「震災被災者とその紙一重の所にいた人間はいかに震災と向き合うべきか」というテーマで語られている。

 

面白い視点だと思った。震災被災者としての視点でもなく、震災から離れた人間の視点でもなく、震災を直に食らった人間が回りにたくさんいるのに、自分は無傷だという視点。

 

罪などあろうはずはないのに、無傷だということだけで罪悪感を背負い込んでしまう。

 

そういう感覚は戦争の時もあったらしい。戦争文学にはよく出てくる。なぜあいつは死んでおれは生きているのか、というテーマ。震災文学はこういうところで、戦争文学と重なる部分があるのかもしれない。

 

主人公は高校生の時に震災を経験し、10年、震災を引きずりながら生きる。主人公の回りも、そういう人間が多数出てくる。

 

もちろん、小説なので結論を出す必要はないが、中途半端な感じは否めない。というか、予定調和感が強い。

 

気になる部分も多い。強いトラウマを持っていた中鵜はどこに行ってしまったのだ?

 

あと、主人公は女性なのであるが、あまりにも小説に出てくる一人称女性主人公然としすぎている。

 

3.11ネタは興味深く読ませてもらったが、ちょっとパンチが弱い。どうしても美しい顔と比べてしまう。

 

 

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