前作、デッドラインの続きである。前作は修士課程を語っていたが、今作は大学に勤務したあとのはなし。
主人公の名前が○○なのである。なぜだろうか? 名前くらい付けてやればよかったのに。
ぶっちゃけ本人なのだから、千葉さんでよかったのではなかろうか。栃木出身で京都の大学に勤めてるのだから、本人そのまんまである。自伝でよかったとおもう。
前作の講評に、「小ネタの回収が出来ていない」と書いたが、本作では小ネタの回収をする気もないらしい。
ネタではないのだ。本作は私小説で、自分に起こったことをそのまま羅列している。創作部分もあるのかも知れないが、創作かどうかはわからず、読者は主人公の暮らしを淡々となぞるだけ。
小野寺という敵らしき存在が現れて、「お、ここから物語の展開か?」と期待させたと思いきや、出版パーティーで挨拶するだけでおしまい。
やおい小説である。山なし、オチなし、意味なし。ならBLかと言うと、主人公は40歳のおじさんなので、ボーイではない。
前作同様、主人公はゲイである。今作はベッドシーンが多用されている。正直、芥川賞候補作品でなかったら、1ページ目で本を閉じている。購入を考えているひとは、ネットで買うのは注意した方がいい。ちゃんと立ち読みして、耐えられそうなら買うべきである。読者を選ぶ作品だと思う。私は選ばれざる読者だった。
突っ込みたいところは(もちろん小説にだ!)多々あるが豚のロースを頼んどいて脂身を食わないというのはいただけない。
よく豚の脂身を高カロリーだと残す人がいるが、あそこが一番美味いのだ。豚の脂身は一種のソースである。そのソースに赤身をからめて喰うと考えて欲しい。もし、カロリーが気になるなら、次の一食を抜けばいいだけである。豚の脂身はそこまでして食う価値のあるものである。
貶しまくってあれなので、1つ褒めると、文章はかなりよくなっている。前作が酷かったのでなおさら良さが目立つ。
この著者はフィクションは書かないのだろうか? それとも、自伝的小説だけが芥川賞にノミネートされ続けているのだろうか?
今回の受賞予想。この作品はない。