第163回芥川賞の発表は明日である。
今回はノミネート作品を全て読むことが出来た。それぞれの作品の感想は以下の通りである。
第163回芥川賞候補作 破局 遠野遥 を読んだ 感想 レビュー - 文学・文具・文化 趣味に死す!
第163回芥川賞候補作品 赤い砂を蹴る 石原燃 を読んだ 感想 レビュー - 文学・文具・文化 趣味に死す!
第163回 芥川賞候補作 首里の馬 高山羽根子 を読んだ 感想 レビュー - 文学・文具・文化 趣味に死す!
「アキちゃん」(文学界5月号) を読んだ。 - 文学・文具・文化 趣味に死す!
第163回 芥川賞候補作 岡本学「アウア・エイジ(Our Age)」(群像2月号) 読んだ 感想 - 文学・文具・文化 趣味に死す!
せっかくなので、受賞作が掲載される文藝春秋に載る選考委員の選評のまねごとをしてみる。
ずばり、わたしの受賞予想は「破局」である。現代の若者の感性を、裏の裏まで抉ったようなこの作品が取らない訳がない。すこし戯画的なところもあるが、今回の顔ぶれならば頭一つ抜けている。
アキちゃん、は子供の習性を描き、子供の残酷な精神は成長しても息づいているという、人間の醜さ描いた作品だ。ただ、それがあまりにも終盤にぽろっと出てくるだけのところが惜しい。
アウア・エイジも面白かった。映画館の仕組み。太宰の子孫をディスってるところ、など読みどころはある。ただ、全体としてなにが言いたいのか今ひとつわからない。さらに、ご都合主義的過ぎて物語りに没入できない。そのあたりが、「わからない」と読者に思わせてしまう。
赤い砂を蹴る、の石原燃氏は太宰治の孫。だからだろうか、意図的に太宰に似せまいと筆が動いたかもしれない。だとすると、太宰の孫というのはマイナスにこそなれ、プラスにはならない。まさに、「最近よく見る風」の作品であり、文体から既視感を覚える。弟はよく書けていると思うのだが、弟以外の人間が薄っぺらい。全員、弟のレベルで書けていたら大作になったかもしれない。舞台をブラジルにしたこともちょっともったない。ブラジルにする必要性が感じられないからだ。
首里の馬は候補作になったのが不運な作品だと思う。前回の作品のほうがよほどよかった。高山氏は量産できる作家なので、是非とも芥川賞に推したいのであるが、この作品で取ってしまうと、逆に今後が続かないかもしれない。さすがに今回は難しいだろう。