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さぶ 山本周五郎 を読んだ 感想 レビュー

 

さぶ (新潮文庫)

さぶ (新潮文庫)

 

 

 

めちゃくちゃ面白い。山本周五郎が廃れない訳が分かった。

 

江戸時代の経師屋の話である。経師とは屏風や襖を作ったり修理したりする職人のことである。

 

江戸時代の庶民の話であるにもかかわらず、目の前で起こっているような気にさえさせる。

 

一人一人の感情の抉り方がすごい。主人公だけではなく、端役の心も余すことなく書いている。こういうのを筆力というのであろう。そして、そのための物語の作り方も上手い。

 

物語の主人公は「さぶ」ではなく「栄二」である。だが、さぶがいてこそ栄二を浮かび上がらせることが出来る。

 

物語は、栄二が盗みの嫌疑をかけられることから始まる。この盗みの真相がなんなのか、一本ミステリーとしてバックボーンにあるのであるが、この作品の面白いところは、栄二の成長とともに、盗みの真相などはどうでもいい、という境地に達するところだ。盗みの真相がわかってちゃんちゃん、という話ではないのである。

 

しかし、一応謎は解明される。読者も、栄二も、もうどうでもいいや、と思っているところで謎は解明されるのだ。読んで損のない傑作。

 

 

なんと映画化されていた。しかし、このキャスト……、怖いもの見たさで観たい気もするが……。

SABU~さぶ~ [DVD]

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  • 発売日: 2003/02/22
  • メディア: DVD