戦後初期の作品である。しかし、古さなどは微塵もない。美しく、面白い作品。
内容は、ただ若年性?痴呆症になった母を精神病院に見舞いに行く話。
それだけなのに、家族の心情とか、社会の風潮とか、世間の空気とかを見事に描ききっている。
これぞ純文学というものである。そして、純文学がいかに面白いか、ひしひしと伝わってくる作品。
残念ながら、近年はこういう力強い純文学が失われて久しいかもしれない。芥川賞はぜひとも、こういう読者に迫り来るものある作品を発掘して欲しい。
つぎつぎと文芸誌が休刊廃刊するなか、母数が少ないから難しいかもしれないが。なら、年に一回でもいいのではなかろうか。