ひと息で読み終えてしまった。
ホモの旦那と精神病の妻の話。
この設定からして面白そうではないか。実際面白い。
人間なんてみんなどこかしらラリッているのだ。
マイノリティ問題でよく言われることは、マイノリティに優しい社会はみんなにとって優しい社会。なぜなら、どんな人も、ある部分を切り取ればマイノリティだからである。
つまり、マイノリティ問題はマイノリティの問題ではなく、全員の問題である、というような。
精神障害も同様のロジックがある。ある部分はみんな狂っているのだ。昔、ある精神科医に尋ねたことがある。わたしは持論を述べた。
「人間なんてみんな狂ってるではないか。人間はみんな精神病患者だである。病人と健常者の違いはなにか?」
彼の回答は極めて明快であった。
「社会生活が営めないような影響が出ていたら病気」
その意味で言えば、この妻はかなりヤバい。
この作品で弱いと感じたことは、睦月の結婚の動機である。笑子は睦月を愛しているのだから結婚する動機がある。しかし、睦月はべつに笑子を愛していない。単にホモのカモフラージュとして結婚したのであれば、笑子こそいい面の皮である。
つまり、睦月の無限の優しさが、小説のリアリティを欠いているように感じるのである。重箱の隅をつつけば。
逆に考えると、この睦月の荒唐無稽さこそ、女子の憧れる理想の男子だとも考えられる。もし、そういう、一種の神に近い理想、イデアであるとするなら、荒唐無稽であることにこそ意味があるとも言える。