ベルリンの通りには色々な名前が付けられている。
カント通り、マルクス通り、ルター通り、
10の短編が収められている。書き下ろしではなく、2014年から2016年までの間、新潮で連載されていたもの。
カント、マルクス、ルターぐらいまでは有名なのだが、最後の方の、トゥホルスキー通りとかマヤコフスキーリングとか、ネタがつきたかマイナーな通りが出てくる。しかし、ネタを絞り出して、文章を磨いて書いているせいだろうか、それとも、このテイストに舌が慣れたか、この短編集、最後の方に行けば行くほど味わい深くなる。
わたしのイメージの中でマヤコフスキーは50、60歳くらいのおっさんのイメージだったが、ググってみたら37歳で死んでいた。
この小説、ネタバレはあり得ない。なぜなら、ネタはないからである。強いて言えば、この小説全てがネタである。
フィジーの小人、とか、さよならギャングたち、とか、abさんご、ほど支離滅裂ではないが、かなり夢小説に近い構造である。
わたしが思ったのは、ミュージカル映画のような感覚だ。ミュージカル映画は、物語の中に歌が入る。この小説は、小説の中に「詩」が紛れ込んでいるような、そんな感覚である。
犬婿入り、とか、献灯使などのストーリーがわりかし明快なものというより、
旅する裸の目とか、そっち系に近いような気がする。
多和田葉子は万人にお勧めするのは難しいが、以下の一節が気に入れば買っていいかもしれない。原稿用紙にあと二行あればオチまで書けたのに。
ブングボックス、初恋、で筆記。
久しぶりに初恋を入れた。 - 文学・文具・文化 趣味に死す!