ダンディズムには様々な掟があり、そのうちのひとつに、
「コートは絶対に洗ってはいけない」
というのがある。
とくに、バルマカーンコートとトレンチコートは間違えても洗ってはいけない。
ダンディズム殿堂入りのユキチの曾孫の福沢幸雄は、ダンディなのでトレンチコートを絶対に洗わなかった。
ムッシュかまやつはso long sacchioで、
あいつは、Mmm いつも、汚れたレンガ色のトレンチコート、トレンチコート。洗濯屋へ出すべきだったよ、おまえ。
この歌はダンディストたちから、「トレンチコートを洗うなんて、まったくダンディズムのなんたるかをわかっていない」と揶揄される。
だがしかしだ。おそらく、ムッシュかまやつこそが世間一般の認識なのではないだろうか。
というのも、わたしは去年バルマカーンコートを買って、嬉しく年中着ていた。すると、四ヶ月ほど着続けていたわけであるが、襟首のあたりが黒ずんできた。コートは絶対に洗ってはいけないと分かってはいるものの、鏡で見て、
「……これはやばいな」
と引いた。
福沢幸雄はファッションモデルで格好いい。だから、トレンチコートが汚れていて臭っていても、歌詞になるくらい大目に見られる。
だが、40近いキモいオッサンが汚れたコートを着ていたら、もはや乞食である。変質者である。
わたしはコートは洗っても良いと思う。とくに襟首当たりは。洗濯屋に出して糊で固めるのはよろしくないが、ウタマロ石鹸とかで襟首をたまにごしごしやるのはありではなかろうか。
ダンディと乞食の二択はきついのである。