ナチスが月から攻めてくる、という設定。
超絶くだらない映画であるが、どうして、滅茶苦茶面白い。
今までのナチス物というと、ナチス=絶対悪として描かれてしまうので、先が読めるつまらなさがどうしてもぬぐえない。
千坂恭二が思想としてのファシズムで述べている。思想のヘゲモニーはカント、ニーチェ、ヘーゲル、ハイデガーとドイツにあったものが、第二次世界大戦後は、サルトル、レヴィ・ストロース、フーコー、デリタ、ドゥルーズとヘゲモニーはフランスに移ってしまった。
なぜか。戦後ドイツの思想の対象は当然「ナチス」になるわけであるが、ナチス=絶対悪、と扱わなければならず、ナチスの悪をお経のように唱え続けるしかなく、そんなものは思想たり得ない。
本来、ナチスの肯定的な面も抽出しなければならいはずなのに、それをやったら最後、「歴史の相対化だ」と批判されて終わる。
多かれ少なかれ、日本も同じような状況だったのではなかろうか。
映画も同じような理由で、ナチスを絶対悪にしなければならないので、ストーリーが陳腐になるのだ。
だが、この作品は違う。ナチスはもちろん絶対悪なのであるが、その絶対悪の中にもおっちょこちょいのダースベーダーみたいなのがいたり、またナチスと戦うアメリカ大統領が再選のことしか頭になかったり、世界各国も秘密裏に宇宙の軍拡を行っていたり、と悪を並列させることにより、絶対悪から絶対を取り去るという離れ業を行う。
ネタバレになるが、各国の宇宙ステーションが実は宇宙戦艦だったりして、ナチスを倒したはいいが核戦争をおっ始めたりと、皮肉がじつに良く利いている。
一見の価値は大いにある。