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ニムロッド 上田岳弘 感想 レビュー 芥川賞候補作たち

晦日である。あと5時間すこしで今年も終わる。というより、今年も終わってた。人生、後悔という波がひっきりなしに打ちつける。来年こそは……っ!

 

第160回芥川賞候補作が発表された。結構前だが……。

以下の通り。

 

上田岳弘(うえだ たかひろ) ニムロッド 群像 12月号
鴻池留衣(こうのいけ るい) ジャップ・ン・ロール・ヒーロー 新潮 9月号
砂川文次(すなかわ ぶんじ) 戦場のレビヤタン 文學界 12月号
高山羽根子(たかやま はねこ) 居た場所 文藝 冬季号
古市憲寿ふるいち のりとし) 平成くん、さようなら 文學界 9月号
町屋良平(まちや りょうへい) 1R(いちらうんど)1分34秒 新潮 11月号

 

町屋さん、今回も入っている。出す作品出す作品、ぜんぶ候補になってるんじゃないか?

というわけで、近所の図書館であるものを借りてきた。

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ニムロッドから読んだ。予備知識はゼロだ。この作者の作品も初。

結果から言うと、滅茶苦茶面白かった。エンターテイメント的なおもしろさではなく、世紀末の哀愁漂うような。まさに、人間の終わりを扱ったような。

 

ネタバレ注意

 

本作はビットコインを扱っている。といっても、ビットコインは小道具だ。小道具を上手く使っている。現代社会の資本主義的虚無感、拝金主義の無意味さ。味気なさ。無味乾燥とした社会。なぜ生きなければならないのか。

主人公は意味もなく涙が流れる。この小道具も言い。

ニムロッドという主人公の友人が小説を書き、涙の小道具を実に上手く演出する。

また、駄目な飛行機、という小道具も作品のリアリティを高めている。駄目な飛行機とは、設計ミスだったり、桜花のような飛行機なのかミサイルなのか分からない飛行機を指す。これはおそらく現在の効率至上主義、また、AIなどの完全性に対する皮肉だ。ニムロッドは駄目な飛行機を愛して収集する。しかし、全て収集してしまう。そして、駄目な飛行機を故意に作り出すことは不可能だと知って涙を流す。

主人公のビットコインのマイニング、彼女の存在、ニムロッドの小説、この3つの物語が、じつに巧妙に組み合わされている。これは技術である。苦心の跡がうかがえる。

見事に現代人の悩み、社会の病理、未来の不安、そういうものを描ききっている。他のを読んでいないので何とも言えないが、受賞して然るべき作品だと思う。

 

 

 

なんだかんだで、このブログ。今年が一番一生懸命書いていた気がする。30日チャレンジとか、いろいろと縛りを付けてやると面白い。

なにより、今年も一年間付き合ってくれた読者の皆様には感謝の気持ちで一杯です。

ありがとう!

来年ももちろん元旦から更新するのでよろしくお願いします。

 

 

 

群像 2018年 12 月号 [雑誌]

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新潮 2018年 09 月号

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新潮 2018年 11 月号

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文學界 2018年12月号

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文學界2018年9月号

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文芸 2018年 11 月号 [雑誌]

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