阿部一族を読んだ。
森鴎外は文句なしの文豪である。
またストーリーテラーでもあると思う。阿部一族、大正二年の作品であるが、いま読んでも面白い。当時は、乃木将軍の殉死が世間的な話題となっていて、それに呼応する形で書かれたとか。
阿部一族は殉死にまつわる物語である。それほど長い小説でもないのですぐに読める。鴎外作品は教科書で舞姫が取り上げられていて、舞姫が文語調だからとみんな敬遠してしまう。残念なことである。阿部一族は口語で書かれているので、現在の小説と同じように読める。
あらすじは殿から殉死の許しを得られなかった阿部家当主が、それでも殉死してしまう。殉死をすると、普通は家督等保証されるのであるが、許し得ていない阿部家の子供たちは半端な家督になる。かくなる上はと館に立てこもり……
と言う話。
意外に哲学的というか思考実験的な話なので、読んでみることをお勧めする。
やはり知らない単語が出てきたので、ここにメモる。
こうけい【肯綮】物事の急所。かんじんかなめ。
「―に当たる」(意見などが急所をついてうまく当たる)
か‐さつ【苛察】
細事にわたって、きびしくせんさくすること。苛酷な観察。
しっ‐そう【執奏】
とりついで奏上すること。また、その役の人。伝奏。太平記(21)「専ら諸事を―せらる」