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木曜小説 力道山の弟 宮本輝 感想 レビュー

 

 ↑これに収録されている。


宮本輝の名前はよく知っている。芥川賞の選考委員も務められていた。しかし、その作品は読んだことがなかった。今回初めて読んだ感想は、滅茶苦茶面白い。おそらく30枚くらいの短編なのに、ストーリーが凝っていて、登場人物もいきいきしていて、これぞ小説、と行った具合だ。

力動粉末、というなぞの物体から始まる。フラッシュフォワードの技巧を使っている。力道山の弟を名乗る大道芸人が、父親が世話をしていて娘と不倫して、その娘が子どもを産むのであるが、父親も事業が失敗したりしていろいろ苦しむ。戦後一時期の亭主関白ぶりを遺憾なく発揮するし、母親も当時の雰囲気を背負っている。雀荘という舞台も味がある。

並の作家ならば力道山の弟を思いついただけで満足してしまいそうであるが、本作品はそれを限界まで上手く調理して、作品としてまとまりのよい料理として昇華した。そんな感じだ。