浅田次郎お得意のヤクザもの小説。だが、ヤクザがメインではなく、ヤクザの周りにいる少年と娼婦の恋愛が軸となっている。また、主役のヤクザが純粋で、ずるがしこいヤクザに嵌められる。
小説は作り物である。もちろん、この作品も作り物だ。だが、弾を一発だけ込めてる、あり得ない、そのあり得ないシチュエーションをさも現実のように描き出す。小説家は魔法使いだろうか。VR、AR、拡張現実など、小説の前には無力である。
そんな風に思わせるほど、気迫の筆致。すごい作品だ。
琉璃想
成功した社長が、生まれた中国に帰り、記憶の片隅に埋もれていた、父を思い出す話し。浅田次郎の話はどれも素晴らしいのだが、どれも、しょうもない恋愛が絡む。この恋愛を絡めずに、テーマを書き切れば、とてつもない文豪になると思うのはわたしだけだろうか。
とくにこの作品では、不倫が作品の醍醐味を破壊してしまっているようにしか思えない。カメラマンの結婚相手が主人公の不倫相手でなくとも、この作品のパワーは変わらない。