Yoshinori Hoshi Official blog

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薄情くじら 田辺聖子 感想レビュー

 

 

第八巻の表題作でもある。

日本文学100年の名作の表題は、作品の質というよりも、タイトルの質で選んでいるところがあって、百万円煎餅もアイロンのある風景もたいして面白くない。

が、この薄情くじらはべらぼうに面白い。

ネタバレもなにもあったはなしではないが、主人公の木津はクジラが食いたくなる。ちょうど、捕鯨反対運動が起こった時期で、クジラが食べられなくなるという恐れが世間には漂っていたはずだ。

だが、牛肉も豚肉も抱負になってきて、同時に、クジラが食べられないところで、とくに困ったことはない、という時代でもある。

木津とその母を捨てて出て行った父親もクジラが好きだった。

だから、母は鯨料理を出すたびに、父がいかに薄情であるかを木津に説いて聞かせた。これが、牛肉とかでは、父親の悪口は一切出てこない。

この作品は、消えゆくクジラと、そのクジラによって育った世代の、まさに、時代が切りかわるその刹那を絶妙に描き出している。

そして、最後のシーン。実は母と父は完全には切れていなかった。これはまさに、旧時代と新時代が、断絶しているように見えるも繋がっている。そのメタファーを想起させて止まない。

名作である。