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猛スピードで母は 長嶋有

 

猛スピードで母は (文春文庫)

猛スピードで母は (文春文庫)

 

 

本当にタイトルの付け方がうまい。主人公は小学校6年生の慎(まこと)である。慎は「サイドカーに犬」の女の子みたいに、感情乏しく、傍観者のように母を含め、周りの人間の様子を観察する。

本当の主役は母で、この母はサイドカーに犬の父親のような感じで、かなり常軌を逸している。

慎という自己主張しない主人公と、自分が中心に世界が回っているような母親との対比、その母親に引きずられ、感情乏しかった少年が動き始める瞬間、よく描かれている。

本作は、言わずと知れた芥川賞受賞作品である。まさに文学の手本のような作品で、読んでいて胸の内側をかきまぜられるような、私は終盤に差し掛かり文字通りお腹を壊した。

飛行機がちょうど着陸態勢に入った時だったので困った。やっと着陸したと思ったら、バスでターミナルまで移動と言うことで、脂汗が流れた。

目がくらむような表現も、ハリウッドのような派手な設定もない。淡々と文字が連ねられている。ただそれだけである。なのにここまで人の気持ちに入り込むと言うのは一体どういう魔法なのであろうか。私が文学で模範とすべき作家が1人増えた。

 

30日チャレンジ中 次の投稿は7月20日7時37分。