ふと車から離れたら、一万五千円を失った。
小説の書き出しとしては悪くないが、現実としては最悪である。
こんな日は心静かに写経するのが一番である。
写経が小説を学ぶ上で効果があるかどうかわからない。が、浅田次郎はよい文章をみつけたら、原稿用紙に書き写すと言っていた。
今回写経に選んだのは、霞町物語から「遺影」である。霞町物語はどれも最高の作品である。その中でも、書き出しが特に素晴らしい「遺影」を写した。
原稿用紙は満寿屋の112。ペンはモンブラン146。インクはパイロット色彩雫の霧雨。