わたしが浅田次郎の作品で初めて読んだのが鉄道員である。20年近く前である。その時読んであまり面白くなかったので、それからプリズンホテルと蒼穹の昴に出会うまで、浅田次郎はわたしのなかで大した作家ではなかった。
文学に対する修行を多少は積み、先日再び鉄道員を読んだ。面白いことは面白い。が、珠玉の作品が綺羅星の如く存在する浅田作品のなかで、鉄道員がその入り口というのは、ひょっとしたら読者を減らしているのではなかろうか。
鉄道員は浅田が得意とする幽霊ものである。が、幽霊ものならばわたしは夕暮れ隧道(霞町物語)や神坐す山の物語の方が優れていると思うのであるが。
映画と小説もいろいろと違う部分がある。小説は雪子の写真がない。映画はある。映画で写真がないと、仏壇が絵にならないからだろう。
しかし、70枚くらい?の短編を長編映画にするのだから、ちょっと作品のニュアンスが変わってきてしまう。特に映画は昔の広末が可愛いすぎたり、健さん格好良かったり、小説とは違う楽しみ方が出来る。読んで、観て、悔いなき作品であることは間違いない。