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献灯使 を読んだ

 

献灯使 (講談社文庫)

献灯使 (講談社文庫)

 

 

多和田葉子はこういう言葉遣いが好きだ。献灯使は遣唐使にかかっているのは言うまでもない。ほかにも、おばあちゃんの「救女隊」とか、せんべいの割れる音が「ガガーリン」だったりする。

献灯とは神仏に明かりを奉納することである。

この作品は3.11を下敷きに作られている。わたしは単行本でも読んで、感動して単行本を人に貸してなくして、もう一回文庫本で買って読んだ。そのくらい手元に置いておきたい作品。

わたしの創作活動にまちがいなく影響を与えた作品の一つだ。

犬婿入りが面白い作品なら、こちらはなかなか読むのは難しいが、哲学的な作品で、文学ならではのパワーを遺憾なく発揮している。想像力を読み手に強く要求してくる。脳をフル回転しながら読まなければならない。

なぜ、彼女はこれほリアルに虚構を作れるのだろうか。3.11直後には想像も付かなかったし、被災者の方々には伏して伏して最初に謝っておくのだけれども、結局3.11は日本にも世界にもたいした影響を与えなかった。

影響はあった。しかし、この作品で描かれている世界ほどの影響はなかった。この作品は3.11でがらりと変わる世界を描いている。そして、わたしが驚愕するのが、3.11によるこの作品の世界が、単なる妄想や絵空事ではなく、もう一つの3.11として恐怖すことが出来ることである。

多和田葉子はこの作品の他にも「不死の鳥」などの、やはり3.11を下敷きにした作品を書いているが、それについては後日。