以下ネタバレ
短編集に入っているが、中編近くある長さ。おそらく人類滅亡後の世界でAIが操縦する潜水艦同士の戦いを鯨の視点で描いた作品。秋山氏の筆力はすごいの一言に尽きる。鯨社会がリアリティをもって迫ってくる。最初しばらくは、鯨の視点だということがわからないところも面白い。
老鯨が若い鯨に過去の武勇伝を語るという形式で書かれている。だから、そこには誇張もあるかも知れないし、嘘もあるかも知れない。そんなことをハラハラしながら読むのがまた楽しいのである
鯨の視点からの潜水艦の擬人化。これを単に「鯨バカだなぁ」で終わらしてはもったいない。イブの時間でも書いたが、AIが人間的かどうかは、人間がそれを人間的と思うかどうか、の問題に過ぎないのだ。
アンドロイドをみて人間だと感じている人間がいるならば、潜水艦を見て岩鯨だと思っている鯨がいてもおかしくない。実際にスイフトは岩鯨に意思はないと見抜いていて、主人公と議論になる。
SFマガジン700【国内篇】 (創刊700号記念アンソロジー)
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