シミュレーション仮説の有力な可能性として、一つの知的生命体が、自分たちを模したシミュレーション世界を五つ作ったとして(実際は何千何万というシミュレーションを走らせるであろうが)、その五つのシミュレーション世界も知的に発達してくれば、また自分たちの世界に似たシミュレーションを走らせる。そのまた次の世界も……、という具合に乗数的に増加する。
そう考えると、この世には無数のシミュレーション世界が存在することになり、我々はその中の一つのシミュレーション世界を生きている可能性は極めて高いと言うことになる。
この世がシミュレーテッドリアリティだとすれば、最大の謎である宇宙に始まりなどにも説明が付く。誰かが作った世界だと言うことだ。
しかし、問題はこれで解決しない。我々が住むこの世界が、誰かが作ったシミュレーション世界だったとしても、では、「誰か」の宇宙はいったい誰が作ったのだろうか? 大本の出発点となった知的生命体の宇宙は誰が作ったのであろうか? そこには宇宙という概念は存在しないのだろうか? この謎が解けない限り、手放しで「この世はシミュレーションなんだぜ」とは言いがたいだろう。