abさんごを読んでいる。文体も、平仮名であることも、内容も、すべて難解である。文体は実に特徴的である。まるで、web翻訳機にかけたようで、考えないと意味が読み取れない。いや、考えても意味が読み取れないことが多い。
文体と平仮名はどうにか我慢できるが、内容のちんぷんかんぷんなことけたたましく、脳みそが激しく揺さぶられるのが分かる。
比喩でも精神的な意味ででもなく、文字通り頭が痛くなった。明日あたり知恵熱が出るかもしれない。
最初の数ページはほんと意味不明で文字面を目で追うことしか出来なかった。普通読めば情景や趣旨が分かる物であるが、これはまったく分からないし情景も浮かばない。
しかし、数ページ読むと、空気の読めない家政婦が来て、一緒に食事をし始めて親子が困る。そんな下りが出てきて、初めて意味と情景がわかる。その安堵ときたら。
浅田次郎は小説の三条件として、面白いこと、美しいこと、分かりやすいこと、を上げている。この中で一番大切なのは分かりやすいことだろう。なんとなれば、分からなければ、面白いとも美しいとも感ぜられないからである。
abさんごが芥川賞をとったことは良かった。もし受賞していなければ、この作品を読むことはなかっただろう。この作品は意味不明だが、文学の骨格のような物を見せつけてくれる。