わたしは原油に投資するのが好きだ。原油は値動きが激しいから、毎日一喜一憂できる。値動きの激しいのが好みならFXでいいじゃないか、と思うかも知れないが、FXはやってみたけれどつまらない。原油の方が趣味だ。理由として思い当たるのは、FXはドルだユーロだポンドだ豪ドルだと目移りする。その点、原油は原油だけである。それも、誰かが作ったわけではなく、地下に埋まっているのを掘り出すだけだ。そんなものが毎日数パーセントも値段を変えている。
今日は今年最大の原油イベントであろうOPEC総会がある。日本時間の19時からだから、あと3時間ほどだ。減産の合意が出来れば価格は上がり、ご破算となれば暴落する。わたしは合意に至ると踏んで、普段より少し多く買っている。
世間では株や為替の話題が尽きない。先日観たエクス・マキナという映画に「白黒の部屋のメアリー」の思考実験が出てきた。メアリーは色彩についてとても詳しい。色彩の構造や網膜の構造なども極めている。だが、メアリーは生まれてこの方白黒の部屋で暮らしているので色を見たことはない。さて、メアリーが部屋から出て青い空を見たらなにか知識以上のことを得られるだろうか? という思考実験である。
株や為替について異様に詳しい人はいる。しかし、その人が身銭を切って投資をしているかといえば必ずしもそうではない。
「投資をするとやっぱり経済の見え方が違って見えますかね?」
と聞かれるたびに、
「そりゃ、もう全然違いますよ」
とわたしは答えている。
ただ、一つ言えるのは、違って見えるのは事実であるが、といって経済に対する洞察が深くなるわけではなく、むしろ、自分の予想を補完するような、歪んだ解釈をしてしまう場合も多いということである。
メアリーの部屋に話を戻すと、メアリーは青い空を見てなにかを感じるかも知れないが、そこに好みや気分が加わることにより、今までの知識と相反することが生ずるかも知れず、知識が統計的なものであったとするならば、メアリーの感性が統計から逸脱していた場合、統計学的知識が歪められてしまうのではないか、とOPEC総会を控えてふと思った次第である。
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