べつに毛嫌いをしていたわけではないが、この歳になるまで007を観たことがなかった。わたしの近所のTSUTAYAは貧弱な部類で、3年も通っているとめぼしい映画はほとんど観尽くしてしまった。たまたま007フェアをやっていて、そこで手に取ったのがカジノロワイヤルである。初めて見た007である。
時を同じくして、Amazonプライムに入会した。するとAmazonプライムでも007フェアをやっていた。カジノロワイヤルには慰めの報酬と言う続編がある。私が見た2作目である。ジェームスボンドはファッションリーダー的存在であるという意見はよく聞く。だからオメガもボンドに目をつけて時計の宣伝をしているのだ。
当代のジェームス・ボンドであるダニエル・クレイグのかっこよさは非の打ち所がない。ただ同時に意表を突かれることもなかった。有り体に言うと特筆すべきことがないのだ。
古い映画は嫌いでは無いが、古いアクション映画は白ける。だから、全部見るつもりなどなく、ちょっとチェックしてみるつもりで007の最初の作品、ドクター・ノーを見た。これが驚くほど面白かった。そもそも、ドクター・ノーはアクション映画ではない。少なくとも前半は。後半は残念な感じのアクションが繰り広げられる。もし、ショーン・コネリーのファッションチェックをするだけなら、後半は観る必要はない。
ショーン・コネリーは格好良すぎた。ダニエル・クレイグとショーン・コネリー、どちらがかっこいいか、などというのは愚問である。比較にならない。比較にならないと言う意味は、比較する対象にならないという意味である。ダニエル・クレイグのかっこよさは、コマンドに出てくるシュワちゃんのかっこよさと通じるものがある。もしダニエル・クレイグのジェームス・ボンドしか見たことがない人は、そのイメージをショーン・コネリーに重ねないほうがいい。ジェームス・ボンドという同姓同名の別人である。
まず、ショーン・コネリーのスーツはベルトレスだ。その代わり、ヒップを包み込むように股上が長く、ずり落ちないようになっている。ミディアムグレーのスーツに紺の無地のネクタイ。ミニマムのコーディネートである。じつに決まっている。どこでスーツを仕立てているか。サヴィル・ロウである。わざわざ映画の中で、「どこで仕立ててる?」「サヴィル・ロウだ」という会話がなされる。