読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Yoshinori Hoshi Official blog

小説家 星香典(ほしよしのり)のブログです。映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係など、思うところをほぼ毎日更新してます。

情報化社会は本当に人を賢くするか 情報で旨いコーヒーを入れることは可能か

先日、ふらりと本屋に立ち寄ったらコーヒー本の特集をしていた。何気なく一冊を取り頁を繰るとコーヒーをいれる適温が記されていた。曰く、95度。95度は高すぎる。わたしは首を捻った。

次の一冊を手に取り、温度の項を探すと、これも95度。次の本も95度。一冊だけ、92度から96度というのがあった。95度という情報が一人歩きしているのであろうか。

理由としては、熱い温度でさっと入れると香りが良くバランス良く豆の成分を引き出せる、とのこと。

少しでもコーヒーに詳しい人ならば、この理由は所詮ある特定の条件にしか当てはまらない、極めて限定的な意見であると一粲するだろう。入れる適温は豆の種類によっても変わるし、焙煎した時期にもよるし、その日の気分で変わるし、人それぞれの好みでも変わる。95度と限定するのは最大公約数ですらない。

ただ、これを読んだ人は95度が適温だと信じるはずだ。おそらく、紙面の関係で詳しくは書けないし、読者を混乱させないように配慮したものだと思う。あらゆる条件で適温は違う、などと書いてあるHow Toを誰が喜ぶ? 仕方のないことだ。

ネットに出ている情報は80度から96度くらいまであるが、それもただの情報で、その中からそれらしいものを選ぶしかない。

実際、コーヒーは豆によって驚くほど条件が変わる。挽いてから時間をおいた方が旨いと以前書いたが、この前買ったブラジルは、挽きたての方が遙かに旨かった。

情報化社会で我々は知識を得たような気になっているが、本当に賢くなっているかどうか、疑問である。本来情報がなければ、試行錯誤するはずのものを、情報を使って試行錯誤を省いている。省かれた試行錯誤には様々な知恵や技術があったかも知れないものに、我々はその知恵や技術に触れる機会を失ってしまっている。不幸なことだ。

試行錯誤することを人々は面倒くさいと考えている。直接答えを手づかみ出来るならその方がいいと考えている。だが、現実には手づかみできる答えなど存在しない。特にコーヒーのいれ方については。だから、面倒くさそうに思えても試行錯誤するしかない。一言付け加えるならば、試行錯誤は意外と楽しい。とりあえず二つ同じドリッパーをそろえることをお勧めする。