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黒書院の六兵衛を読了した。

黒書院の六兵衛を読了した。

浅田次郎のインタビューで、主人公の台詞がない小説、と言っていて気になっていた。たしかに、主人公の台詞はほとんどない。六兵衛が語らないことによって、武士のなんたるかを表現しようとしたのか。また、その風景を描くことによって江戸から明治への時代の移り変わりを表現したのかも知れない。

浅田独特のコメディタッチで描かれているので面白い。その分シリアス性を欠いている。数多ある幕末ものとは一線を画した作品であることは間違いない。

すっきりする小説と、すっきりしない小説がある。この小説は見事にすっきりしない小説である。

すっきりする小説の楽しみ方は簡単だ。途中の面白さ±最後の面白さ。
すっきりしない小説に最後というものがない。最後がないのでどこをどう評価していいかが難しい。登場人物の描写か、思想的背景か、文学的興趣か。

わたしはどちらかというとすっきりしない小説が好きで、自分もそう言う作品を書く。だいたい純文学はすっきりしない。

しかし、この作品はミステリー調で、かつ、すっきりしない。金田一やコナンで、
「犯人はっ……! 一体誰なのだろう?」で終わる感じだ。だから、もう少し純文学調だったら、この作品もすっきりしないことが問題になることもなかったのだろうが……。

 

 

黒書院の六兵衛 (上)

黒書院の六兵衛 (上)