中谷はポケットに手を突っ込んではいけないという。氏のズボンは幼少時、母親がズボンのポケットを縫いついけて手を入れられないようにチューンナップされていたらしい。ポケットに手を突っ込むとは、自信のなさの表れであるという。アメリカ大統領は手を見せているとか。
心理学的分析にも、ポケットに手を入れるとは後ろめたさとか隠したい真理、とか言われている。
それは事実かも知れないが、取るに足らない理屈だ。転んだとき危ないから、と同じくらい下らない理由だ。世の中の偉人賢人の多くがポケットに手を突っ込んでいる。
そもそも、ダンディズム的理由に無意識が介在する余地はない。無意識に手を突っ込むならば、それはダンディズムとは無縁の代物である。
やはり、ポケットに手を突っ込む第一義は格好いいからだ。格好を付けるためだ。だから、いろいろ流儀がある。落合流ならば、ジャケットの前方から手を回して入れる。横からジャケットの裾をすくい上げて入れるのはNGだそうだ。
加藤流では、ズボンのポケットではなくジャケットのポケットに入れるのが格好いいらしい。
自分もポケットに手を入れるが、その時にもっとも気をつけていることは、ちんぴらっぽくならないようにである。ちなみにあぶない刑事は自分的にちんぴらの域であり、少しもダンディだとは思えない。