調子こいて高い靴を買った。履き心地は相当悪い。一年くらいは我慢して履かないといけないっぽい。
まぁ、ドレスシューズで運動をするわけでもなければ長距離を歩くわけでもないので、履き心地よりも格好良さを優先すべきなのは分かっている。ブラウンのストレートチップだ。これは落合先生の言に従ったわけである。靴というのは革の芸術である。本当に美しいのだ。靴が美的存在であるということを、この靴を持って初めて実感した。
電車に乗って、「ははは、この車両でオレ様ほど高い靴(注・ビスポークほどは高くはない)、美しい靴を履いているやつはおるまい」などと一人で悦に入っていた次第である。
初日は帰ってきてまず靴磨き。ぴっかぴかに磨いて、しばらく見とれていた。
そして二日目。
駅まで車で送ってもらった。車はUターンしなければならないので、砂利の駐車場に止めてもらった。
余は駐車場に美しい靴で降り立ち、背筋を伸ばし数歩、駅の方へ歩いたとき、足が何かに引っかかって転倒しそうになった。
砂利の駐車場には罠が仕掛けられていた。高さ10㎝、横に1メートルくらいの錆びた針金が地面から生えているのだ。それに引っかかった。
「なぜ、このようなところに罠が!?」
問題は靴である。ガクンっ、と引っかかったので、靴に針金で刷られた跡がついて、トゥの革が削れてしまった。あり得ない! なぜ! 理不尽!
家に帰ってブラウンの塗料入りシュークリームを塗ったが、跡が完全に消えることはなかった。履いていればいつかは傷が付くこともあると思う。でも、二日目って早すぎないか?