ある日、朝起きたら蟻が大量発生していた。玄関から廊下を通ってリビングまで大行進ししている。リビングに落とした甘い菓子パンがお目当てだ。
暇だったので、そのうちの一匹を観察していた。
玄関から黙々と歩いてリビングまで行くのだが、そこからの行動は奇妙だった。
蟻は巣から出撃して、獲物をとって、巣に直帰すると思ったらさにあらず。リビングまで行くと、餌の方には行かないでうろうろし始めた。ほかの蟻も散開して餌の半径1メートル弱をうろうろしているのだ。
もちろん、餌のパンには蟻が群がっている。そいつらも、餌を持って帰るだけではなく、のんびり食事をしたり休憩していた。すぐに餌を持って帰ろうというやつはいない。
自分が観察してた蟻ちゃんもうろうろしているだけで一向に餌を取りに行かない。餌の周辺に散開するのは、周囲を警戒するためだろうか。
30分ぐらい見ていたのだが、見ていたこっちが飽きて二階の自室で執筆していた。
しばらくして、同居人が起きたらしく、一階で悲鳴を上げている。
どたどたと怒鳴り込んできて、
「なんで掃除機で吸わなかったの!!」
と怒られた。
ずっと見ていたら、蟻といえども彼らの目的や生活がある気がした。そんな気がすると、なんか可哀想で大虐殺する気になれなかったのだ。
下に降りると、同居人に殲滅させられたようで、蟻の世界はなくなっていた。