旅行の目的は気分転換なのだから、仕事のカバンがいくら使いやすくて、中身を移す手間もいらないからといって、そのまま持っていくべきではない。
せめてカバンくらい変えたいものである。変えられない物もある。眼鏡や財布や時計など。中でもたちが悪いのは携帯だ。携帯はハードだけではなくソフト面も休暇に仕事を持ち込む。偉大なる飛行機モードにすればいいが、なかなか飛行機モードを貫くには度胸がいる。いっそのこと、家に忘れるというのも手ではあるが、それはそれで落ち着かないし、一緒に行く連中と連絡を取ることも出来なくなる。
そうすると、気分を変えるには服飾品くらいしかないのである。靴を変え、服を変え、カバンを変えるくらいしか有効な手段がない。
テクノロジー、就中、通信の発達は人類に多大な便益をもたらしたが、気苦労が増えたのは間違いない。通信革命以前と以降では旅行の本質が変わったように思う。旅行は世俗の雑事からのがれることが出来たが、通信の発達のせいで旅行地においても雑事がつきまとう。
これは現代人の精神を蝕むものである。ということで、とりあえず夜まで飛行機モードにすることにした。